バーチャルオフィスとは?法人登記の可否やメリット・デメリットを解説

「売上が伸びてきたので法人化したいが、自宅住所で登記したくない」「作業は自宅で行うので住所のためだけに賃貸オフィスを契約するのも現実的じゃない」
そんな悩みを抱える起業家やフリーランスの方は多いのではないでしょうか。
また、会社員として副業を行いながら、将来的に起業を考えている人の中にも、同じような課題を感じている方がいるかもしれません。
そこで本記事では、低コストでビジネス用の住所を利用できる「バーチャルオフィス」について、仕組みやメリット・デメリット、費用感をわかりやすく解説します。さらに、バーチャルオフィスの利用に向いている職種・業種も紹介します。
バーチャルオフィスとは住所や電話番号などが借りられるサービス
バーチャルオフィスは、物理的なオフィスを構えずに、法人運営に必要な「住所」「電話番号」などを利用できるサービスです。
登記用の住所を準備する必要があるものの、自宅住所を使いたくないというフリーランスや起業準備中の方にとって、有効な選択肢となります。
法人登記のためだけに賃貸オフィスを借りると大きなコストが発生しますが、バーチャルオフィスであればより毎月のランニングコストを削減できます。
さらに、法人登記だけでなく、郵便物の受け取りや電話対応、会議室の利用など多彩なサービスが利用できるのもバーチャルオフィスの魅力です。こうした機能を活用することで、法人の運営をスムーズに進められるのも大きな利点といえるでしょう。
バーチャルオフィスの主なサービス内容6選

バーチャルオフィスでは、法人化を検討している方に役立つ、さまざまなサービスを利用できます。ここでは、代表的な6つのサービスをご紹介します。
- 法人登記可能な住所の利用
- 郵便物の受取・転送
- 電話番号の貸し出し・秘書代行
- 会議室・打ち合わせスペースの使用
- 私書箱の活用
- 会社設立のサポート
法人登記可能な住所の利用
多くのバーチャルオフィスでは、法人登記に利用できる住所が提供されています。事業者によっては、東京都心や主要なビジネスエリアなど、信頼性やブランドイメージの向上につながる住所を用意しているのが特徴です。
名刺やWebサイトに都心部の住所を記載することで、対外的な印象を良くする効果が期待できます。また、自宅住所を使わずに済むため、プライバシーを守れる点でも安心です。
郵便物の受け取り・転送
バーチャルオフィスでは、届いた郵便物を施設側が受け取り、自宅や指定先の住所へ転送してくれるサービスが用意されています。
たとえば、税務署からの通知や取引先からの契約書類など、重要な書類も確実に受け取れるため、在宅ワーク中心の方でも安心です。事業者によっては、週1回や月1回など、転送の頻度を選べるほか、急ぎの郵送物に即時対応してくれる場合もあります。ビジネスの効率を損なわず、必要な情報をしっかり受け取れるのが魅力です。

電話番号の貸し出し・電話秘書代行
バーチャルオフィスの中には、ビジネス用の固定電話番号を貸し出してくれるサービスがあります。たとえば、東京03番号など都市部の番号を使うことで、顧客や取引先に「しっかりした企業」という印象を与えやすくなります。
さらに、電話応対を専門のスタッフが代行してくれる電話秘書代行サービスを併用すれば、業務中や外出中でも着信対応を任せられます。電話の内容を記録してメールやチャットで通知してくれる機能もあり、対応漏れを防ぐことが可能です。
会議室・打ち合わせスペースの使用
打ち合わせや商談の場が必要なとき、バーチャルオフィスが提供する会議室サービスが活躍します。都心部や駅近の立地にある施設を、時間単位で借りられるため、クライアントとの対面ミーティングや、オンライン会議のための静かな空間として利用できます。
設備が整っている会議室で打ち合わせをすることで、来客に対して信頼感を持ってもらいやすくなり、ビジネスの成果にもつながるでしょう。
私書箱の活用
郵便物の取り扱いに柔軟性を求める場合、私書箱が便利です。バーチャルオフィスによっては、郵便物をすぐに転送せず、一時的に保管しておける私書箱を提供しているところもあります。施設の窓口が閉まっている時間帯でも郵便物の受け取りが可能なケースもあります。
転送を頻繁に行いたくない人や、週末などにまとめて受け取りたい人には特に有効です。また、受け取りのスケジュールを自分の都合に合わせられるため、業務の合間に郵便対応を済ませたいというニーズにも応えられます。
会社設立のサポート
バーチャルオフィスの中には、会社設立を手厚くサポートしてくれるサービスを提供しているところもあります。
初めて起業する人にとって、法人設立の手続きは複雑でわかりづらく、不安を感じるポイントが多いものです。そうした悩みに対応するため、登記書類の作成補助や提出方法の案内、税務・法務に関する基本的なアドバイスなどが受けられる体制が整っています。
さらに、必要に応じて行政書士や司法書士を紹介してもらえることもあり、スタートアップの基盤づくりにも役立ちます。手続きをスムーズに進められることで、開業時の負担を大きく減らせるため、自分のペースで安心して事業をスタートしたい方にとって、非常に心強いサービスです。
バーチャルオフィスを利用するメリット5つ

バーチャルオフィスの利用は、法人化を検討しているビジネスパーソンにとって多くのメリットがあります。中でも、特に押さえておきたい重要なポイントを5つに絞ってご紹介します。
- 固定費を大幅に抑えられる
- プライバシー保護が可能
- 企業イメージが向上する
- クライアントからの信用力が上がる
- 業務効率が向上する
固定費を大幅に抑えられる
バーチャルオフィスを活用する最大のメリットは、賃貸オフィスやレンタルオフィス、シェアオフィスなどに比べて圧倒的にコストを抑えられる点です。物理的なオフィスを借りる場合、毎月の家賃に加えて、水道光熱費や通信費、備品購入費などの雑費が発生します。
一方で、バーチャルオフィスの場合には安ければ月額千円未満で利用でき、オフィス維持にかかる固定費を最小限にできます。事業立ち上げ初期は収益が不安定なことも多いため、こうしたコスト削減は大きなメリットです。
特にスタートアップやマイクロ法人(代表者一人で運営する会社)にとっては、無駄な支出を抑えつつ事業を始められる選択肢として、有力な手段となるでしょう。
プライバシー保護が可能
バーチャルオフィスを利用すれば、法人登記の際やWebサイトなどに自宅住所を記載する必要がなくなります。これは、初めて起業する方にとっては大きな安心材料となるでしょう。
法人登記の際の書類はもちろん、自社のWebサイト、名刺、請求書などには住所の記載が必要ですが、自宅住所をそのまま公開することに抵抗を感じる人は多いはずです。バーチャルオフィスを利用すれば、信頼性のあるビジネス用住所を使用できるため、自宅場所が第三者に知られるリスクを避けられます。
特に個人でビジネスを行う人にとって、安心して活動できる環境が整う点は大きな利点です。プライバシーと安全性を両立しながら、法人としての運営ができるのは、利用者にとって心強いポイントでしょう。
企業イメージが向上する
バーチャルオフィスを活用することで、企業イメージを向上させられます。バーチャルオフィスを提供する事業者の多くは東京都の港区や渋谷区といった、ビジネス拠点として知られるエリアの住所を提供しています。こうした場所の住所を名刺やWebサイトに記載することで、対外的な印象が格段に良くなるでしょう。
取引先や顧客に対して、信頼できる会社というイメージを与えられ、営業面でも有利に働く可能性があります。
特に、WebディレクターなどのIT系の職種は、対面での信頼構築よりもオンライン上の印象が重視されることもあるので、住所の見栄えが与える影響は小さくありません。オフィスを構えずに事業を展開するスタイルでも、信頼性を高められる手段としてバーチャルオフィスは有効です。
クライアントからの信用力が上がる
バーチャルオフィスの住所を使うことで、法人としての信頼感を高められます。自宅住所を使用していると、相手によっては「フリーランス(個人事業主)」「副業している会社員」という印象が強くなり、特に法人顧客や大手企業との取引では不安を与えてしまう可能性があります。
しかし、ビジネス用の住所を使えば、事業基盤が整っている印象を与えられ、クライアントからの信用も得やすくなります。特に初対面のやりとりや、契約時における安心感の提供は、継続的な関係構築にもつながるでしょう。
業務効率が向上する
バーチャルオフィスでは、電話対応や郵便物の受け取り・転送などの業務をアウトソーシングできるため、事業主自身は本来の業務に集中しやすくなります。
たとえば、顧客対応の電話を秘書代行サービスに任せたり、郵便物の処理を定期転送にしておけば、対応にかかる時間と手間を大幅に削減できます。特に人手の少ない立ち上げ期の企業や、一人で会社を運営するマイクロ法人の場合には、この効率化が大きな支えになります。
作業時間を確保しつつ、必要なサポートはプロに任せる体制が整うことで、限られたリソースを最大限に活かした事業運営が可能になるでしょう。
バーチャルオフィスを利用するデメリット2つ

バーチャルオフィスは多くの利点がありますが、注意すべき点もあります。導入を検討する際は、メリットだけでなくデメリットもきちんと把握したうえで、自分に合ったかたちで活用することが大切です。主なデメリットとして、次の2点を解説します。
- 実際の作業スペースは含まれない
- 信用に不安を持たれるケースもある
実際の作業スペースは含まれない
バーチャルオフィスは、住所や郵便・電話対応などの機能を提供するサービスであり、実際に作業を行うスペースは含まれていません。そのため、自宅やコワーキングスペース、カフェなど、別途作業場所を確保する必要があります。
物理的なオフィスが存在しないため、書類の保管や対面での共同作業を要する職種には不向きな場合もあります。特に対面での顧客対応が頻繁に発生する業種では、バーチャルオフィス単体では対応しきれないことがあるため注意が必要です。
業務内容や日々の働き方に合ったかたちで、別途作業環境をどう整えるかを併せて考えておくことが大切です。なお、施設によっては会議室やミーティングルーム、コワーキングスペースが利用できるケースもあるので、事前にサービス内容を確認するといいでしょう。
信用に不安を持たれるケースもある
バーチャルオフィスの利用が、場合によっては取引先に不信感を与えてしまうことがあります。特に初めて取引を行う相手や、コンプライアンスを重視する大企業などでは、実体があるのか、本当に稼働しているのかといった疑問を持たれることもあるでしょう。
実際に登記住所を検索すれば、複数の企業が同じ住所を使っていることがわかります。そうなると、取引先はバーチャルオフィスの利用について把握するところとなります。
バーチャルオフィスの利用がマイナスに受け取られるかどうかは、クライアント企業の担当者によって感じ方が異なります。気にしない人もいれば、実体の有無を重視する人もいるでしょう。
こうした不安を和らげるには、秘書代行や来客対応が可能な会議室付きのバーチャルオフィスを選ぶのが効果的です。実務面でも信頼性の面でも、安心感を持ってもらいやすくなるでしょう。信頼性のあるサービスを利用し、必要に応じて対応力を示すことで、十分な信用を築くことができるはずです。
バーチャルオフィスが向いている職種・業種は?

法人化を検討しているフリーランスや副業中の会社員の中には、さまざまな分野でビジネスを展開している方が多いでしょう。では、その中でもバーチャルオフィスの活用に特に適しているのは、どのような職種や業種なのでしょうか。
ここでは、バーチャルオフィスと相性の良い代表的な職種・業種をご紹介します。
Webディレクター・エンジニア・デザイナーなどのIT系
IT系の職種は、パソコンとネット環境さえあればどこでも仕事ができるケースが多く、バーチャルオフィスとの相性が非常に良いといえます。
顧客とのやり取りは基本的にオンラインで完結し、対面での商談も必要最小限です。都心の住所を活用すれば、営業面での信頼性向上にもつながるでしょう。
コンサルタント・講師業
コンサルタントや講師業も、バーチャルオフィスを活用しやすい職種のひとつです。業務の多くはクライアント先への訪問やオンラインでの指導・提案で行われるため、日常的に固定のオフィスを必要としません。
また、名刺や契約書に信頼性のある住所を記載できることは、専門職としての信用構築に役立ちます。必要に応じて会議室を借りられるプランを選べば、対面の打ち合わせにも柔軟に対応できます。
ライター・翻訳者・動画編集者などのクリエイティブ系
ライターや翻訳者、動画編集者などのクリエイティブ系の仕事は、フルリモートで業務を進めるケースがほとんどです。
納品物もデータで完結するため、物理的なオフィスを構える必要がなく、バーチャルオフィスで十分に対応できます。法人化して活動する際も、信頼性のある住所を使うことでクライアントに安心感を与えることができるでしょう。
倉庫を外部に委託しているECサイト運営者
ECサイトの運営者の中には、商品の保管や発送業務を外部業者に委託しているケースも多いでしょう。そうした事業者にとっては、自ら物理的な店舗や事務所を構える必要がないため、バーチャルオフィスとの相性が良好です。
バーチャルオフィスで提供される住所は、特定商取引法にもとづく表記にも利用できます。法人登記や問い合わせ対応に使用する住所をバーチャルオフィスで補完し、運営拠点をコンパクトにすることで、コスト削減と運用効率の向上を両立できます。
バーチャルオフィスでは登記できない職種・業種があるので注意
バーチャルオフィスは多くの職種・業種で利用可能ですが、すべての企業が法人登記できるわけではありません。中には、法律や業種ごとの規制により、登記に際して実体のある事務所が必要とされるケースもあります。
具体的には、以下の職種・業種は法人登記が難しいとされています。
【法人登記が難しい職種・業種】
- 金融商品取引業
- 古物商
- 士業(弁護士・税理士など)
- 廃棄物処理業
- 職業紹介業
- 人材派遣業
- 建設業
- 不動産業
- 探偵業
- 風俗営業
これらの業種は、事業内容の特性や行政の許認可の関係で、実際の業務を行うための物理的な事務所が求められることが多く、バーチャルオフィスでの登記が認められない場合があります。利用を検討する際は、あらかじめ関係機関や管轄行政に確認しておくと安心です。

バーチャルオフィスの月額費用は数百円〜1万円程度

バーチャルオフィスの利用料金は、サービス提供事業者や選ぶプランによって大きく異なります。一般的な目安としては、月額数百円から1万円程度の範囲で利用できることが多く、物理的なオフィスを構える場合と比べて、圧倒的にコストを抑えられるのが特徴です。
安価なプランでは住所利用のみとなるケースが多く、電話対応や会議室利用などの機能を含む場合は、やや高めの月額設定となる傾向があります。
有料オプションでの追加が必要になるサービスや、月額料金がアップするサービスの例は次の通りです。
- 電話転送サービス
- 電話秘書代行サービス
- 会議室・ミーティングルーム利用
- コワーキングスペース・フリーデスク利用
- 郵便物のスポット転送(即時転送)
なお、多くのバーチャルオフィスでは、月額費用に加えて、入会金や保証金などの初期費用が必要になるケースがあります。金額は事業者によって異なり、月額料金の1ヵ月分から、1年分に相当する場合までさまざまです。契約前に費用の内訳をよく確認しておくと安心です。
バーチャルオフィスの選び方のポイント4つ
バーチャルオフィスは多くの事業者が提供しています。それぞれ、費用やサービスが異なるため、自分に合ったバーチャルオフィスを選ぶことが重要です。ここでは、主な選定ポイントを4つ紹介します。
- 法人登記の可否
- 住所の信用力や知名度
- サービス内容の充実度
- 運営会社の信頼性と口コミ評価
法人登記の可否
バーチャルオフィスを選ぶ際、最初に確認すべきなのが、法人登記に対応しているかどうかです。すべてのサービスが法人登記に対応しているわけではなく、住所貸しのみを提供しているケースもあるため注意が必要です。
特に、法人化を検討している人にとっては、登記の可否は極めて重要なポイントです。登記ができないバーチャルオフィスを選んでしまうと、事業計画に支障をきたすおそれがあるので、契約前に必ず確認しましょう。
住所の信用力や知名度
バーチャルオフィスで提供される住所は、名刺やWebサイト、契約書などに記載する場面が多く、対外的な印象に大きく影響します。そのため、東京都であれば港区・渋谷区・千代田区など、ビジネスの中心地として認知されているエリアの住所を選べるかどうかは重要な判断材料になります。
同じバーチャルオフィスでも、会社の住所によって信用の感じ方が変わることもあるため、業種や顧客層に合ったエリアを選ぶことが大切です。住所の見栄えは、営業活動や商談の場で信頼を得るためのひとつの武器となるでしょう。
サービス内容の充実度
バーチャルオフィスは、月額費用だけで判断せず、利用できるサービス内容をしっかり比較する必要があります。郵便物の受け取り・転送、電話番号の貸し出しや電話応対、会議室の利用など、事業運営に欠かせない機能がそなわっているかを確認することが大切です。
また、これらのサービスが基本料金に含まれているのか、オプション扱いなのかもチェックしておきましょう。必要な機能をすべて含めた場合の総額を見積もることで、費用対効果の高いサービスを選べます。
運営会社の信頼性と口コミ評価
どれほど条件が良さそうに見えても、運営会社の信頼性が低ければ安心して利用することはできません。運営年数や過去のトラブルの有無、公式サイトの情報の分かりやすさなどから、企業としての体制を見極めましょう。
また、実際の利用者による口コミやレビューも参考になります。サポート体制の質や対応スピード、サービスの安定性など、公式サイトには載っていないリアルな声から判断材料を得られることもあります。
複数の事業者を横断的に検索できるサイトを使って、サービスを比較し、総合的に信頼できる会社を選ぶようにしましょう。
バーチャルオフィスを活用して、無理のない法人化を進めよう
バーチャルオフィスは、低コストで法人登記やビジネス運営に必要なインフラを整えられる有益なサービスです。特に、WebディレクターやエンジニアなどのIT系に加えて、コンサルタントや講師業など場所に縛られない職種との相性は抜群です。
「自宅住所を登記に使いたくない。でも賃貸オフィスを借りるほどでもない」──そんな悩みを持つ方は、バーチャルオフィスの導入を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
自分に合ったバーチャルオフィスを探すなら、OfficeConnect(オフィスコネクト)が便利です。条件に合うオフィスを比較しながら、最適なサービスを見つけましょう。
